米子から南部町役場・法勝寺庁舎を過ぎて日南町方面に約1キロ、新法勝寺橋をわたって少し行ったトコロ、国道180号線沿い右手に古民家カフェの看板が見えます。今年2013年3月にオープンしたお店の名前は「cafe七草」オーナーは瀧山佳世(たきやま・かよ)さん。夫・雅人(まさと)さんは近くの高木農園で農業研修の傍ら、休日はバリスタとしてコーヒーを淹れます。
佳世さんは旧・羽合町(現・湯梨浜町)出身で、南部町出身の雅人さんとは高校の同級生。先に東京に出ていた雅人さんから2年遅れて上京した佳世さんは、アルバイト先のタルト専門店でスタッフ用の賄いに焼き菓子を作ってもっていくようになってから、徐々にお菓子作りにのめり込むようになりました。
もともと料理好きだった佳世さんは、自分では食べきれないほど大量のお菓子を作ってしまうこともしばしばありました。余ったお菓子は自宅から職場までの通勤途中にあった、雑貨屋さんのお友達にお裾分けしていました。
そんなある日、その雑貨屋の2階の部屋に空きができて、お友達から「カフェでもやる?」と声をかけられました。こうして小田急線沿線の経堂駅前のすずらん通りに9席だけの小さなカフェ「9chaiR」が誕生しました。「その友達は半分冗談で言ったと思うんですけどね。まさか本当にカフェをやるとは思ってなかったと思いますよ。」佳世さんは当時を述懐して笑います。
9chaiR開店当時はお菓子を中心でしたが、徐々に食事も提供するようになりました。また、お店には小さな子供連れのお客様も多く、次第に提供する料理の内容について考えるようになりました。丁度その頃、埼玉で有機栽培をしている農家さんと知り合い、無農薬栽培の野菜を中心に、身体に優しい食材を取り入れるようになっていきました。
開店から4年。お店には沢山のお客様がいらっしゃるようになりました。そして多くの子供たちも。折角なら子供たちが走り回れるような広いスペースが欲しいな…。そう思った佳世さんたちは、新しいお店を出す場所を探し出しますが、東京ではなかなか良い条件の物件が見つかりませんでした。佳世さんと雅人さんは相談の上、2人の故郷・鳥取に帰ってお店を開くという決断をします。
2010年5月、9chaiR閉店。鳥取で開く、お店の名前は既に決まっていました。その名は「木鳥(ことり)食堂」。木にとまって一休みする鳥のように、みんなが旅の途中で骨休め出来るような場所でありたい。そう思って付けた名前です。9chaiRの常連さんにも、「今度は鳥取の木鳥食堂で逢いましょう」。そう言ってお別れしました。
帰郷を機に、佳世さんは長年の夢だったワーキングホリデーでカナダのビクトリア島に旅立ちました。ビクトリアでの日々はとても素敵なものでした。特に朝市の雰囲気は素晴らしく、強く印象に残りました。
帰国後、佳世さんと雅人さんは小さな命を授かりました。2011年11月。2人の間に生まれた男の子の名前は大河くん。出産後、しばらくは子育てに専念していた佳世さんでしたが、育児にも少し余裕が出てきた頃、再びお菓子作りへの意欲が頭をもたげてきました。
そして、2013年3月14日。古民家を改装した「cafe七草」がオープンしました!
あれ、木鳥食堂は?
9chaiRは佳世さん1人で切り盛りしていましたが、今度のお店は雅人さんも手伝うということで、「ことり」の響きはあまりも可愛くて恥ずかしいという雅人さんからのクレーム?が入り、「ななくさ」になったのです。
でも…
昔の七草は『米・あわ・きび・ひえ・ごま・みの・小豆』。七草を原材料にした食事やおやつでオモテナシ。
とても、ぴったりの名前かも。
現在、cafe七草ではベーグル、国産小麦と天然酵母のライ麦パン、まるパン、焼き菓子、スコーンなどがいただけます。また、特別な日にはケーキも焼きます。どれも卵・バター・牛乳などを使用せず、甜菜糖・メイプルシロップなどの身体に優しい甘みを使った子供たちに安心して食べてもらうことのできるメニューです。そして、週末にはバリスタ・雅人さんの淹れるコーヒーも。また、将来は食事も提供できるようにするつもりです。
来ていただいたお客様が気軽にくつろいで、そしてみんなが笑顔になって帰っていただける…cafe七草をそういう場所にしたい。それが佳世さんのこだわりです。
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[写真/文: 森藤]