オーナーの竹内雄一郎さんは徳島県鳴門市出身。北海道で大学在籍中にスローフードや地域と食に関心を持つようになりました。在学中にアルバイトをしていた現地のチーズ工房で卒業後も2年間、チーズ作りを続けました。チーズを作るということだけではなく、作ったチーズをどのように食卓で利用するのが最良なのか、というチーズを使った料理についても研究しました。「もともと食べることは好きですからね」と、竹内さんは笑います。
チーズ工房ではモッツァレラをはじめ、スカモルツァ、ブラというハードタイプのチーズなど、数種のチーズの製造に携わっていたのですが、中でもリコッタチーズに惹かれました。また、チーズの製造だけではなく、リコッタチーズに最適な料理を追求しました。
リコッタチーズに魅せられた竹内さんは、チーズ工房を退職した後、リコッタの本場であるシチリア島(イタリア)に旅します。現地入りした当初はイタリア語を全く話せなかった竹内さんでしたが、現地でチーズ作りを学びながら、次第に言葉も理解出来るようになりました。今でもイタリア語は勉強中。
シチリアで触れたリコッタチーズは北海道のチーズ工房で作っていたものとは違うものでした。ひとくちにシチリアのリコッタと言っても、農家によって材料や割合、作り方も様々です。ですが、どの農家も決して無理して材料の調達はせず、自分のところで自然に入手可能な原料を使って、最高のチーズを作ります。
「チーズの触り方やザルに入れるときの動作…そんな何気ない仕草が少し変わっただけで、出来上がったチーズが風味も味わいも全然違うモノになるなるんですよ。シチリアのチーズ農家では子供でさえ、その動作を自然に行っている。でも、ボクが真似しようと思ってもなかなかうまくできませんでした。」竹内さんは述懐します。
日本とシチリア島では気候が全然違います。全く同じリコッタチーズを作ることはできませんが、無理をしてシチリアのチーズを再現するのではなく、日本の風土にあった最高のリコッタチーズを作る。そしてそれに合う最高の料理を作る。それが竹内さんのこだわりです。
現在(2012年11月)、Ricottaroさんの牧場には羊5匹とヤギ4匹が居ます。リコッタチーズは羊乳、山羊乳、と信頼する農家さんから分けてもらっているジャージー牛の牛乳から作られています。
フレッシュなリコッタチーズはやはり、これまた焼きたてのパンに塗って食べるのがシンプルだけど、最も美味しいと感じます。リコッターロさんのカフェで提供されるのは自家製酵母のハウスパン。「名前は特にないんですよ」と言われたのですが、チーズに合うだけでなく、パン自体が美味しいのでお勧めです。
リコッターロさんの店先にはハーブガーデンがあります。カフェの料理に何気なく添えられるローズマリーをはじめ、イチジクの樹や様々なハーブなどが無農薬で育てられています。
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[写真/文: 森藤]